漁師町で出会ったケンジに一目ぼれ!

――土肥さんとケンジとの出会いを教えてください。
土肥:私は2014年から北海道・小樽の猫たちを撮り続けています。車の運転をしないので、いつも歩いて新しい撮影場所を探すのですが、あるとき、なんだか妙に懐かしいひなびた漁師小屋を見つけて。いい場所だなあと眺めていたら、猫が2匹、目の前にトコトコと現れたんです。それがケンジとメス猫のきっこちゃんでした。
ケンジはきっこちゃんが好きだったんですよ。私なんかには目もくれずに、雪の中きっこちゃんを追いかけていました。まったく相手にされていなかったのですが、フラれてもめげない姿が可笑しくて、ここで写真を撮りたいと思ったんですね。
2018年当時、ケンジは漁師さんに飼われていました。それで早速、翌朝に漁師さんを訪ねて「ここにいる猫たちの写真を撮らせてほしい」とお願いしました。ケンジとのつきあいは、それからですね。季節ごとに2~3週間滞在して、写真を撮りためてきました。そのうちケンジは住宅街で飼ってくれるおうちを自分で見つけてきて、飼い猫として暮らしています。
ケンジの魅力は「みんなを笑顔にすること」

――2015年春生まれのケンジは現在8歳。土肥さんはケンジの半生以上を見てきたことになります。なぜケンジを撮り続けるのでしょうか?
土肥:ケンジの最大の魅力は、みんなを笑顔にしてくれること。今も漁師町ではボス猫なので、住宅街と浜を行ったり来たり。順応性が高くて、人間との関わり方も上手なのですが、決して媚びることはなく、堂々としています。それでいておっとりしていて、どこか抜けていて、顔は愛嬌があって、体はビッグサイズ。妙に人間ぽくて、「中におじさんが入ってるんじゃないの」なんていわれることも。とにかく、ケンジを見るとみんな自然と笑ってしまうんです。

――ボス猫は地域の猫たちをまとめるリーダー的な存在ですよね。漁師町には何匹くらい猫がいるんですか?
土肥:前はもっといましたが、今は15匹弱でしょうか。先代のボス猫が引退することになり、後釜争いが起きたんです。ケンジは2番手・3番手のポジションにいましたが、やさしくて不要なケンカをするタイプではなく、ボス猫は難しいかなと思っていたのですが、最終的にはケンジがボス猫になって。町中をパトロールしているような姿を見ると「本当にボス猫になったんだな」と感慨深いですし、浜をノッシノッシと堂々と歩く姿は、やっぱりすごくかっこいい。たぶんケンジも「オレの町だぜ!」くらいの気持ちで歩いていると思います。私もパトロールに同行して撮影しています。
――町の人たちにもケンジはよく知られていますか?
土肥:「ケンジって名前なんですよ」と説明してもみんな頑なに変えない。それぞれが好きな名前で呼んでいて、呼び名が9つくらいあるんですよ。ちなみに今暮らしている家では“ブッチャー”と呼ばれています。
ちなみに「ケンジ」の名づけ親は漁師さん。実はこう見えてケンジは声がすごく高いんです。「ヒャーッ」という裏声のような声が歌手の平井堅さんに似ていることから、“ケン”をもらって“ケンジ”になりました。
愛しのケンジをフォトグッズに!クッションはインパクト大

――今回、ケンジの写真を使ったフォトグッズをいろいろ作成していただきました。写真の選び方やつくり方のコツをアイテム別に教えてください。まずはクッションから。これ、インパクトありますね!
土肥:クッションはどうしてもつくりたかったんです。顔をドーンと大きくプリントして、一緒に寝たら楽しそうだなと思って。
クッションは立体的なので、まるで本物のケンジと一緒にいるみたいなんです。視線を感じて、目が合って「あっ、クッションか」と気づく(笑)。本当につくってよかったです!

――文字を入れたデザインもかわいいですね。
土肥:どんな文字を入れるか考えるのも楽しいんですよね。今回は英字の「BOSS CAT KENJI」のほかに、あえて左下にカタカナで「ネコ」と種別を入れたのがポイント。「わかるじゃん!」という感じですが(笑)。
身につけるものは気分が上がるデザインに

――Tシャツもかわいいですね。
土肥:今回の写真展のメイン写真でつくりました。おじさんっぽいケンジがかわいくて。でもちょっとおじさんすぎるので(笑)、イラストやロゴでかわいらしさをプラスしました。
――同じ写真を使ってトートバッグもつくったそうですね。
土肥:はい。Tシャツもトートバッグも身につけるものなので、着る人・使う人の気分が上がるのが一番。なので、明るい写真を使い、かわいいイラストも入れました。外で使うことが多いと思うので、ちょっと人に見せたくなるような、そして見た人も楽しい気持ちになってくれるようなものがいいなと思ってつくりました。
――センスよく仕上げるコツはありますか?
土肥:グッズの主役を決めることです。主役を引き立たせるために、背景はシンプルなほうがおすすめです。あとはデザインに悩んだら、お子さんに聞くのも手ですよ。私もよく甥っ子に聞くんですが、子どもは素直なので「これがいい」「あれがいい」と率直な感想を教えてくれます。

土肥:ちなみに富士フイルムのフォトグッズは、文字やスタンプを入れるのもかんたん。トートバッグはデザインの種類も豊富で、写真を入れるだけでおしゃれな雰囲気になりますよ。
マグカップやスマホケースは余白を活かすのがコツ

――マグカップは、側面にぐるりと写真をプリントする「シングル」デザインですね。写真選びのコツはありますか?
土肥:横長のいい写真を探そうとすると結構難しいので、正面と背面と2面にわけて考えるのがいいと思います。背面には余白を活かして文字を入れてもかわいいですよ。スマホケースも同じですね。逆にスマホリングは小さいので、顔がアップの写真でつくりました。
写真は構図で選ぶより、本当に好きな写真を選ぶのがポイントかなと。きっとみなさんにも「いくら見ても見飽きない」とか「この表情がたまらない」というお気に入りの写真があると思うんです。

土肥:マグカップにして毎朝その写真を見ながらコーヒーを飲んだら、より美味しく感じそうだし、スマホケースにしてスマホを触るたびに目に入るのも最高じゃないですか。やっぱり「好き」という気持ちは大切だなと思います。
好きなもののグッズに囲まれて過ごす幸せ

――ほかにどのようなアイテムをつくりましたか?
土肥:カレンダーをつくったのですが、好きな月からつくれるのがいいですね。今の時期に合わせて6月はじまりにしました。ほかに、お気に入りの写真をまとめて1枚にできる「デザインコラージュプリント」もつくりました。フレームのデザインがたくさんあって、選ぶのも楽しかったです。
――たくさんのグッズをつくった感想を教えてください。
土肥:グッズを注文する時間も楽しかったですね。時間があれば、もっとつくりたいくらい。大好きなケンジの写真が、いろいろなカタチで身近にあると、それだけで気持ちが上がり、日常を楽しくしてくれますね。写真は撮ったり、普通にプリントして飾ったりする以外に、こうして暮らしの中で使えるグッズにするのもすてき。身の回りに好きなものや推しの写真でつくったグッズがあれば自然と笑顔になるし、最高だと思います。
ケンジの写真やグッズが見られる企画展開催!

ケンジにあたたかかな眼差しを向ける土肥さんの写真展「気ままなボス猫『ケンジ』~猫フォトの撮り方・魅せ方教えるべや~」を、東京・六本木のフジフイルム スクエアで2023年5月26日(金)~6月8日(木)まで開催します。
会場には、今回のために撮り下ろした作品を中心に迫力ある銀写真プリント約50枚がずらり。浜から街、家の中へとシーンが移るように並べられ、まるでケンジと一緒に散歩をしているような気分に。愛くるしい表情やくすっと笑える味のあるポーズ、ボス猫らしいキリっとした姿など、いろいろなケンジに出会えます。

展示をご覧になった土肥さんは、ケンジが大きく写された迫力ある写真に感激した様子でした。
「おなかの毛の柔らかい感じも見るだけで伝わってきて触りたくなるほど。細かいヒゲや瞳の輝きもケンジそのもので、再現性の高さに驚きます。銀写真プリントって、すごいですね。この写真を通して、ケンジの暮らしている町や季節の彩り、北海道の空気感が、見ている方にも伝わればうれしいです」
冬の北海道では空がピンク色に染まることもあるそう。ケンジと一緒に写る季節折々の美しい色彩にも注目です。
会場ではほかに、本記事で紹介したケンジグッズの実物の展示も見ることができ、ケンジグッズを購入できる写真展期間中限定のECサイトへの案内もあります。
さらに、土肥さんによる猫フォト撮影のコツを紹介した展示やトークショーなど、楽しく役立つ情報も盛りだくさん。自分の“推し”を撮ったり、グッズをつくったりしたい気持ちが盛り上がります。
見れば心があたたまり、まるでケンジと過ごしているような気分になれる幸せな写真展。ぜひ、ケンジの魅力を体感しにきてください!
開催概要
企画展名 | 写真展「気ままなボス猫『ケンジ』~猫フォトの撮り方・魅せ方教えるべや~」 |
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開催期間 | 2023年5月26日(金)~6月8日(木) |
開館時間 | 10:00~19:00(最終日は16:00まで、入館は終了10分前まで) 会期中無休 |
会場 | フジフイルム スクエア(FUJIFILM SQUARE) |
入館料 | 無料 |
※ 企業メセナとして実施しており、より多くの方に楽しんでいただくために入館無料にしております。
※ 写真展はやむを得ず、中止・変更させていただく場合がございます。あらかじめご了承ください

北海道生まれ。2008年に猫と暮らしはじめたのを機に被写体が猫中心となる。2014年北海道・小樽で生きる猫たちの姿を撮り続け、現在に至る。著書に『北に生きる猫』(河出書房新社)、『みんなケンジを好きになる』(河出書房新社)
Photo:Miho Doi Text:Emiko Furuya
2023.05.26公開
気まぐれだからこそ、ベストショットはちゃんと残したい。
#ペットの写真と。もっと。

気まぐれさが魅力の猫。大好きな一枚をお気に入りのグッズにしてみませんか。毎朝が幸せになるマグカップ、一緒におでかけできるTシャツ、お部屋を彩るインテリア雑貨など、大好きな猫の写真に囲まれた暮らしは心も豊かにしてくれます。