スマホは低位置、子どもの目線のさらに下へ
――動きはじめた赤ちゃんを上手に撮影するコツはありますか。
石野千尋さん(以下、石野):よくいわれることですが、子どもの目線に合うようにカメラを低く構えて撮るのがおすすめです。ねんねの時期は上から撮ってもかわいいのですが、寝返りやハイハイ姿は上からだと表情がよく見えません。ねんねも、横向きなら真横から撮ると表情をしっかり写せますよ。
スマホで撮るときは本体を逆さまにすると、カメラの位置をもう一段階下げられます。低い位置から撮るほど奥行きが強調されて、写真の立体感や臨場感がアップ。いつもと違う特別な一枚になります。縦向きの写真のほうがより見あげる感じになり、横向きだとワイド感が出ます。
石野:動きがダイナミックに見えるので、公園など屋外での撮影にもおすすめです。お花畑や原っぱでもとてもかわいい写真が撮れるので、ぜひ試してみてください。
子どもの成長写真はドキュメンタリーを撮るつもりで
――石野さんはどんなタイミングでお子さんの写真を撮っていますか。
石野:実は生まれてから、1日1枚は子どもの写真を撮ることを日課にしています。カメラマンという職業柄、キメキメの写真も多く撮りますが、何気ない日常を残すことも強く意識しています。
石野:先日、息子がバウンサーで急に大泣きしたので何事かと思ったら、手にしていたおもちゃを頭の上に落としてビックリしていて。かわいいなあと思わず1枚だけ写真を撮りました。
石野:どこかクスッと笑える写真が好きなので、子どもたちのヘンな寝顔やダイナミックすぎる寝相もよく撮ります。ほかにお絵描きやおもちゃに夢中になっている姿を気づかれないうちに撮ったりもしますね。
石野:こういう日常写真はSNSにアップすると反響も大きくて、「もっと撮っておけばよかった」「私もこういう瞬間を見ていたはずなのに……」なんていわれます。みんながずっと忘れたくない瞬間って、実はこういうリアルな日常なのかもしれませんね。
――日常の何気ない瞬間を撮り逃さないコツはありますか。
石野:一番撮り逃さないのはスマホだと思います。カメラを構えたことに子どもが気づくと、動きを止めてしまったり、こちらに近寄ってきたりすることが多いので。スマホなら気づかれずに自然な表情を狙いやすいですね。
石野:私はスマホにストラップを付けていて、家の中でも首からかけています。そうすると、撮りたい瞬間にパッと撮れます。2歳くらいになると、カメラを見るとすぐにキメ顔やポーズをつくる子も増えてくるので、このころから素の表情を残すことを意識しておくのはいいかもしれません。
日常の写真というと、「うちは散らかっていてムリ……」とか「もっとおしゃれな写真が撮りたい」という人もいます。でも私はシーツがしわくちゃだろうが、おもちゃが散らかっていようが、暮らしがちゃんと写っている写真が好きですね。
私の子どものころの写真は、親がレンズ付きフィルムの「写ルンです」で撮ったもの。生活感があふれていますが、「昔はこんな家に住んでいたなあ」なんて懐かしくて、見るとあたたかい気持ちになれます。子どもたちにも将来写真を見てそんなことを感じてほしくて、日常写真はドキュメンタリーを撮るような感覚で撮っています。
石野:子どもが小さいころしか撮れないオムツ姿やお風呂は、とくに撮り逃さないように心がけています。なかでも子どものお風呂写真が大好きなので、夫が入れているときに撮りにいきます。こどもの日の菖蒲湯や冬至のゆず湯は、季節感のあるかわいい写真になりますよ。
写真を撮ることで、育児が少しだけラクになる
――育児が大変で子どもの写真をたくさん撮る余裕がないママやパパも多そうです。
石野:そうですよね。ただ私自身は、逆に写真を撮ることで育児の大変さがやわらぐこともあると感じています。
ちょうど下の子の離乳食が始まるんですけど、離乳食づくりって私にとっては苦行でしかなくて(笑)。でも生まれて初めての食べものを口にしたときの子どもって、ものすごくいい表情を見せてくれるんですよ。上の子の離乳食は、その表情を写真に撮るのを楽しみにして、なんとか乗り切りました。
離乳食の写真は、一冊のフォトブックにまとめられそうなほど撮りましたね。トマトの酸っぱさにビックリしたり、ヨーグルトを食べてなんともいえない複雑な表情をしたりと、フォトジェニックな表情が次から次に現れます。ときには出したものを手でぐちゃぐちゃにしたり、ペッと口から出したりするんですけど、それも思い出だなと思って。
石野:離乳食は、連続で撮るとかわいい表情がとらえやすく、数枚並べると表情の変化もあって楽しいですよ。食べさせながら撮影するのは難しいので、撮影するときは100均で買えるスマホスタンドなどでスマホを固定しています。
キメキメ写真がレストランの料理なら、こういう日常写真はお惣菜かもしれません。たまに食べるレストランの料理には心が躍りますが、毎日食べてほっとするのはお惣菜。写真も同じ感じかなと。アルバムにまとめたときも、キメキメ写真とリアルな日常写真の両方がバランスよく入っていると、見返すのがよりおもしろくなると思います。
「おうちスタジオ」でとっておきの1枚を
――誕生日のような記念日の写真はどんなふうに撮っていますか。
石野:定番ですが、風船やフラッグガーランドを飾るだけでもかわいいですよね。ハーフバースデーはベビーソファに座らせて撮りました。
誕生日は毎年少し気合いを入れて、夫の手描きの絵を背景にしています。背景を変えるだけで、おうちでもかんたんにスタジオ風の写真が撮れるんですよ。
石野:絵は写真用のロール紙に描いていますが、模造紙で充分。絵が苦手なら色付きの模造紙やお気に入りの布を壁に貼るだけでもいいと思います。子どもと一緒にお絵描きをするのも楽しそうですよね。
ただ、記念日の写真って、親が張り切って準備しても、子どもの機嫌がいいとは限らないんですよね。そんなときはムリに粘って撮影せず、時間をおいて撮り直すようにしています。
――おすすめの構図はありますか。
石野:腰がすわっていたら、壁の前にテーブルを置いて、ハイチェアなどに座らせるのがおすすめです。テーブルにケーキやお花を飾るだけでサマになりますし、奥行きを感じる立体感のある写真になります。バストアップの写真にすれば、壁紙を貼る面積も少なくてすみますよ。
私はこのおうちスタジオ風のバースデーフォトをフォトブックの表紙に使っているので、雑誌の表紙撮影のような気持ちでのぞんでいます(笑)。
石野:お気に入りの写真はできるだけプリントしたり、フォトブックにまとめたりしています。やっぱりスマホやパソコンの中に入れっぱなしはもったいないし、何かの間違いで消えてしまったら大変なので。
つくったフォトブックは本棚に並べて、子どもたちもすぐに手にとれるようにしています。娘は写真によって記憶している思い出も多く、「ここ行ったことあるね!」「あれ食べたね!」なんていいながらうれしそうに眺めています。
愛用のフォトブックは富士フイルムの「イヤーアルバム」です。プリントがきれいなのはもちろん、子どもの手で触っても汚れにくく、紙が厚手で折れにくいところが気に入っています。
赤ちゃんのころはイベントが多いので不定期に、あとは年に1回くらいのペースでフォトブックをつくって、成長を振り返っていきたいですね。将来大きくなった娘と息子にも喜んで見てもらえたらいいな、といまから楽しみです。
1983年生まれ。東京工芸大学芸術学部卒業後、渡英。Central Saint Martins, London Collage of communicationを卒業。在学中より仕事を始め、色と光を大切に、日々写真を撮り続けている。
2022.06.22公開
かけがえのない瞬間を、手軽にフォトブックに
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